30歳を迎えるころには挨拶や立ち振る舞い同様、装いにも一人前の社会人として最低限の責任を持つべきです。取引先や部下、後輩の前で恥ずかしいスーツ姿は見せられません。しかしそれはスーツ単品で表現できるものでもないのです。シューズ、シャッツ、ネクタイといったアイテムをいかに効果的に合わせることができるかそれがカギとなります。
20代であればすべてのシーンで万能選手である、黒のプレーントゥ一足あれば事足ります。しかし30代になったらぜひ一足は持っておきたいのが、正統派のストレートチップです。普段使いにはもちろんですが、ここぞという時のフォーマルなシーンで端正で品位のあるストレートチップは、その実力を発揮してくれるでしょう。
靴はブラウン派という人も、一足目は必ず黒を選んでください。それもメダリオンなどが施されていない内羽根式の、シンプルなタイプを選ぶのが大切です。
プレーントゥは基本中の基本で、それだけに逆に極めれば一番奥が深いものです。切り替えは内羽根式か外羽根式か、あるいはなしの一枚仕立てか。製法はグッドイヤーかマッケイか、コバはどういう形状かソールはシングルかダブルか。アッパーに使用されているレザーの種類やステッチの間隔、カラー等ディテールの違いで同じプレーントゥでも人に与える印象は違ってくるのです。
確かに見た目のデザインバリエーションとしての面白みには欠けますが、プレーントゥだけでオーダースーツの着こなしにも対応できるようになれば、間違いなくどんなスタイルの靴を選ぼうが合わせでの失敗はなくなるでしょう。プレーントゥが基本中の基本と呼ばれている所以です。
靴に関しては黒のストレートチップ、シンプルなプレーントゥ、この2足そろえばあとはどんなスタイルの靴を選ぼうが構いません。
ビジネス鞄程以前と現在で劇的な変化を遂げた物はないでしょう。例えば20年前は携帯や自動車電話は高嶺の花でモバイルアイテムといっても一般的にはポケベルがせいぜいでした。ビジネス用の鞄といえばレザーバッグのことを指したものです。
10数年前でも現在の様にノートブックは浸透しておらず、現在人気急上昇のネットブックバッグやネットブックケースに至っては、存在さえしていませんでした。いまやナイロン素材のブリーフケースは当たり前、まさにビジネス用のスタンダードは時代を映す鏡といっていいでしょう。
ですからノートブックやネットケース対応のナイロンブリーフケースは、現在の東京では世代を問わないビジネス用鞄のスタンダードとして位置づけられています。このモバイル対応のブリーフケースをスタンダードとすれば、出番が少なくても重要な商談やプレゼン用の勝負鞄として持っておきたいのが、やはり正統派のオールレザー素材の鞄です。
むろんクラシックなダレス、アタッシュでも構いませんがまずはブリーフケースあたりで十分です。この手堅い2タイプの物に加え、さらに持っておきたいのが趣味の良いカジュアルテイストの鞄です。イタリアのフェリージやダニエル&ボブと言った人気ブランドのレザーとナイロンのコンビネーションの鞄や、さりげなくロゴ使いされたブランド物鞄がそれに当たります。
携帯電話の普及で、時計は実用性よりアクセサリー的な要素を担うようになり、クロノグラフやデジタルウオッチなど、本来スポーツやカジュアルな時計とされてきたものが、業界系トレンドの影響でビジネスユースとしても認知されたことで、例えばベルトはレザー製のものでダイアルはホワイトカラーのものを選ぶというような、オーダースーツに合わせる時計の鉄板ルールは今や完全に過去のものとなった感じがあります。
実際かつてのドレスウオッチという概念さえ、東京では時代に合わなくなってきてさえいます。それだけに時計選びに何らかの基準を設けるのは、非常に難しいことです。
オーダースーツマスターを目指すなら、やはり上級編としてエントリーしておきたいのはクラシックなタイプのドレスウオッチです。パテックのようなソフィステイケイト派でも、グランドセイコーのような質実剛健派でも構いません。ただしシンプルな文字盤、ホワイトダイアル、レザーベルトであることが必須条件であることだけは、覚えておいてください。
少々難易度は高いですが、デザインに特徴があるモダンなトノーケース、スクエアケースの腕時計をイタリア調のオーダースーツや、カラーダイアルの時計を全体のコーデイネートのアクセントとして、使用するのも有効です。こちらを現代のスタンダードとして位置づけるのも、悪くないことです。
東京でオーダースーツを作る人も多いことでしょう。オーダースーツを上手く着こなすためには、それに連なるアイテム選びもしっかりとしなければなりません。ここでは重要なアイテムである靴・ビジネスバッグ・時計の選び方を紹介しました。スーツを上手く着こなし、東京で活躍しましょう。