東京でオーダースーツを作るとき、ポケットの位置や形も考えておく必要があります。その形ひとつで、そのスーツの印象がとても違って見えるからです。収納する場所といってもデザインはさまざまあり、フラップと呼ばれる蓋の有無の選択も重要なのです。オーダースーツを依頼するならば、覚えておくと便利なポケットについての知識をご紹介します。
東京でオーダースーツを購入するとき、布やスーツのデザインだけではなく必ず選ばなければならないのが、ポケットのデザインです。そうはいってもジャケットには胸や腰、そして内側にもあり、それぞれの役割も少しずつ違います。胸にあるそれはハンカチーフを入れるのが本来の役割で、腰の位置にあるチェンジポケットは小銭を入れるためのものでした。
デザインではフラップと呼ばれる雨やホコリを防ぐ蓋付いたものが基本となり、このほかに斜めになっているスラントがあります。
フラップは東京などホコリの多い都会では有効なデザインで、蓋の部分が腕に引っ掛かって邪魔と感じるかもしれませんが、マナー上は外に出しておくのが良いとされます。取り付け方では別布を付けるか、または身ごろを裁ち出して蓋にする方法とが選べます。
一方のスラントは斜めという意味で、ポケットの口がフラップは水平ですがこれは身体の中心から外側へ向かい下がった形です。もとは乗馬服だったジャケットの前屈姿勢でも、中身が取り出し易いまたは落とさないようにと考えられたデザインでした。
ブリティッシュスタイルのジャケットに多いチェンジは「小銭」を意味し、もとは硬貨を入れておくために使われてきました。右の腰の上が基本で現代では殆どが装飾的ものとなっていて、デザインの応用として斜めに付けるスラントタイプもあります。
オーダースーツのポケットは、ジャケットの印象だけでなく着る人の見た目まで変えてしまいます。例えば胸の部分に関しても、ウェルトとバルカではまったく異なりますし、フラップがあるかないかでもカジュアルな印象に変わってしまうのです。
ウェルトは口に飾りの口布が付くオーソドックスな形で、別名箱ポケットと呼ばれます。パルカはイタリアの伝統的な技法で作られ、口の部分が脇に掛けて船底のような曲線を描きます。何年も着ていると体型に沿って丸みが出て、胸板を立体的にかつ美しいシルエットを見せる効果もあるのです。
表からは見えませんが、ジャケットの内側も収納場所としてとても便利な機能があります。仕立て方は「お台場仕立て」や「三角台場」、「丸台場」などがあります。名前の由来は船着場の台場にその形が似ていることから付けられました。見た目の違いだけで、収納する機能は同じです。またポケットの周囲に表地を使うと芯地や裏地が下がるのを防いだり、お台場仕立てにして置く裏地を交換するのが簡単になったりと、何年も着ることを考えた仕立て方法でしょう。
内側につける収納部分には名刺入れや、タバコを入れていたものもあります。名刺入れには10枚から20枚ほど名刺を入れても問題ないボリュームがあり、形崩れの心配もありません。チケットのような大きな紙を入れても折れ曲がることもなく、非常に使い勝手の良いものです。
東京でビジネスをするならば、1着はオーダースーツを用意しておきたいものです。オーダーならではの生地選びやスーツのデザインで頭を悩ますことにはなりますが、身体にフィットするスーツの利点を考えればやはり作ってよかったと思えるはずです。
生地が決まったところで、つぎはポケットの形でスーツのデザインを決めてみるのはどうでしょうか。体型をスタイリッシュに見せるスラントはシンプルな生地のアクセントにもなり、小さなポケットが上下に並ぶチェンジはクラシコスーツや、上着の丈が長いものやウェストシェーブ、裾フレアが特徴的なブリティッシュスタイルにとても合います。
蓋のないノーフラップは、共布で口の上下部分を丁寧にパイピングで仕上げます。このデザインはフォーマルなジャケットに多く見られ、反対にアウトポケットは普段使のジャケットに多いデザインです。
日本では真夏の暑さに対処するクールビズ用にも用いられ、お洒落感を出すデザインスーツにも使用します。バリエーションも豊富で腹部にプリーツを入れたものや、フラップをつけてボタン止めにすることも可能です。
フラップの付いたジャケットはビジネススーツの基本ともいえますが、収納場所とはいえこの部分に物や手を入れるのは厳禁です。表のポケットはあくまでも装飾のため、物をいれるのであればしっかりと作られている内側にいれましょう。
日常のなかで、ポケットに注意を向ける事はほとんど無いといえます。ですがオーダースーツではそのひとつひとつに意味があり、なくてはならない存在なのです。デザイン一つで人となりも違って見えてしまうので、良く考えて選ぶべきです。